日本語アドバイザーの村上です。

ご存じの方も多いかもしれませんが、昨日の朝9時に、カイロの国会議事堂前で焼身自殺未遂事件がありました。本日の Egyptian mail紙によりますと、自殺しようとした人はAbdo Abdel Moneim Kamalさんというレストランオーナーの男性だそうで、レストランへのパンの供給に不満があったとのことです。48時間以内に退院できるとのことですから、深刻な症状ではないようです。

私はこの事件の第一報を発生後二時間ぐらい(午前11時)にtwitterで知りました。焼身自殺というのはチュニジアの政変のきっかけにもなったわけで、実際、第一報ののときには衝撃的なニュースだったと思います。ただ、その後「エジプト 火」という意味のアラビア語を検索キーにしてtweetを追っていましたが、直後は毎分1tweetぐらいのスピードで追加されていき、それなりに話題になっていはいたものの、夕刻には一時間に1tweetぐらいに落ち着き、チュニジアで見られたような「炎上」とか2ちゃんねる用語でいう「祭り」状態には、少なくとも現状では発展していません。

また、発言内容としても「有名になるための新しい方法ですね」といったシニカルなものが目立ち、「France24」というニュースサイトが「Kamal氏は精神障害の病歴があり入退院を繰り返していた」と報じると、「ははは。そりゃそうだろう」といった発言もありました。少なくとも私の目に入った範囲ではチュニジアの「ベン・アリ許すまじ!」といった雰囲気で現体制を批判する発言は見つけることができませんでした。

また、アレキサンドリアのテロやチュニジアの政変と比べて、今回の焼身自殺未遂事件のネットユーザーの対応では、以下の2点で違いが見られました。

1.ハッシュタグができなかった。

チュニジアでは、焼身自殺した学生の名前から #Bouazizi  というハッシュタグが作られました。ハッシュタグは誰でも作ることができ、そのハッシュタグを使ったツイートが一覧で見られるので、ユーザーを結集させることができます。エジプトではアレキサンドリアのテロなどでも積極的にハッシュタグが利用されました。今回、(少なくとも私の眼に入る範囲で)そういったハッシュタグが作られなかったということは、ネットユーザーの間に結集しようという意思がなかったと判断していいのかもしれません。

2.精神障害のニュースを積極的に共有した。

また、前述の「France24」がKamal氏の精神病歴を報じたところ、事件を報じるサイトは他にも大量にあったにもかかわらず、「France24」だけが積極的に共有されました。もし精神障害の影響で自殺未遂を起こしたのだとすれば、事件の意味は決定的に変わることになります。ネットユーザーの間でこの報道だけが積極的に共有されたということも、やはりネットユーザーは事件を収束させるべきだという意志を持っているような印象を受けました。

ということで、これからこの事件についても危機感を煽る論調の報道が増えるかもしれませんが、少なくともネットユーザーの間ではこの焼身自殺未遂事件をきっかけにして政権を倒そうというような動きは今のところ見受けられません。

ただし、日本ほどインターネットが普及していないアラブ圏では、ネットユーザーは富裕層に偏っている可能性もあり、その声が国民を代表しているとは限りません。貧富の差も激しいのが現実ですので、大多数は全く別の意見を持っている可能性もあります。

なお、Kamal氏の精神病歴については、それを否定する報道もあります。

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