このブログは主に中東向けに日本の情報を発信していますが、今回は日本向けにエジプトの情報をお伝えします。日本語教育アドバイザーの村上が書いております。

ご存じの方も多いかとは思いますが、昨年の大晦日にエジプトのアレキサンドリアで爆弾テロが起き、エジプト人23名がなくなりました。犯人が誰かはまだ特定されていませんが、日本の外務省は1月3日に注意喚起を発し、その中で以下のように触れました。

現時点では、本件に関する犯行声明は確認されていないため、今次事件の背後関係は判明していませんが、国際テロ組織「アル・カーイダ」などのイスラム過激派が関与した自爆テロとの見方も出ています。

各種の報道では国際テロ組織アルカイダ系武装勢力「イラク・イスラム国」の関与が取りざたされ、1月4日にはエジプトの「サラフ主義者の若者たち」を名乗るイスラム過激派がウェブ上でコプト教徒を標的にしてさらにテロを起こすと宣言したそうです。(ただし、URLでその宣言を特定した報道は残念ながら見つけることができませんでした。)その宣言ではエジプトにいるコプト教の法王シェヌーダ3世が名指しされていたとのことです。

コプト教では1月7日がクリスマスで、その前夜のミサが一年で最大の宗教行事となるため、エジプトでは厳戒態勢が敷かれることになりました。

日本では、アレキサンドリアの事件の後、1月3日に産経新聞がこのように論評しました。

今回のテロ事件後、信者同士が衝突したことは、きっかけさえあれば双方の潜在的な不信感が噴出する危険性があることをあらためて見せつけたといえる。

ただ、そういう懸念を否定できるほど私はエジプト社会を理解しているわけではありませんが、これが事実の全てではないということは現地に住んでいればわかります。そこで、今回は幾つか分かりやすい動画や写真などをご紹介したいと思います。

まず最初は、1月2日に公開されたらしい人気歌手Samo Zaenの歌です。

歌のタイトルは「مسلم و مسيحي ( كلنا مصريين )」ですが、私の拙いアラビア語の知識では、「ムスリムとキリスト教徒(私たちはみんなエジプト人だ)」という意味であろうと思われます。この歌はtwitterやfacebook上で瞬く間に評判になりました。いくつものコピーが共有され、それぞれがたった一週間で何万もの再生回数になっています。

(そういう事情で、普段は公式チャンネルから動画をご紹介しているのですが、今回はチャンネルオーナーが明確ではありません。しかし、この歌の共有された経緯を考えるとSamo Zaen氏の意思に沿わない共有ではないのではないかと思っています。しかし万一ご本人からクレームがあれば、この部分は削除します)

次にご紹介するのはイスラムの象徴である三日月とキリスト教の象徴である十字架をあしらった特徴的なロゴです。

このロゴにはこのように”One home, One pain”という文字が入っていることも多いです。facebookやtwitterのアイコンで、このロゴを使う人が急増していきました。facebookの関連ページを私がtwitterの個人アカウントで「いいねボタンを押そう!」と紹介したところ、日本で活躍するモロッコ人パンクロック歌手のユーセフさん、トルコの国際交流基金専門家の村木さんをはじめ、多くの方にご賛同いただけました。

またtwitterではカイロ在住の日本人から以下のような発言もありました。

今日、近所のカフェでランチしてたら、窓の外を歩いている男の人が三日月(イスラム教の象徴)とクロス(十字架)を重ね合わせた例のデザインのTシャツを着ているのを発見!ナマで見たのは初めてだったので(しかも自分チの近くで)、ちょっと感動した。

http://twitter.com/#!/GIGIcicak/status/23870282695446530

同時に、facebookなどでは、ムスリムに対してクリスマスのミサに出席しようという呼びかけが広がっていました。1月4日の時点でThe Daily news Egyptは2000人のムスリムが参加を表明していると報じました。(http://tinyurl.com/2ajcydm)

過激派にテロを行うと名指しされたシェヌーダ法王が主導するサンマルク大聖堂のミサには、エジプトの閣僚や大統領の息子などのムスリムも出席しました。

さて、こうしたなか6日の夕刻にミサが始まったのですが、その当日の写真を4枚ご紹介します。

一枚目は参列している参加者が撮影した写真です。

http://yfrog.com/h0rn3ngj

テロが予告されている中で行われるミサの生々しい雰囲気が伝わってきますね。

二枚目の写真は参列者の全体像を捉えたものです。

日本にお住まいの人は分からないかもしれませんが、右隅に見える黒ずくめの人が着ているのは、女性が体の線を見せないためのニカーブというもので、明らかにイスラム教徒です。しかも自分の娘らしき子どもを連れてきていますね。

三枚目の写真は礼拝後に彼らが目にした光景です。

この写真には、以下のようなキャプションが付いていました。

In front of a church in heliopolis.. egyptian muslim brothers r supporting us on Xmas eve #egypt http://yfrog.com/h2rvzedj
(イブにへリオポリスの教会の前でムスリムの兄弟たちが私たちを応援してくれている)
http://twitter.com/#!/Donziii/status/23104703705387009

彼らが手にしているのは上の方で紹介した三日月と十字架のマークです。それがエジプト国旗の色で塗られているバージョンですね。この写真を撮影したDina Nazmyさんは、別のところでこんな風にも述べています。

never felt zs way b4, hope#MasrBaladna stays Safe.. we r such a KIND Supportive People (こんなふうに感じたことは今までなかった。祖国エジプトが平和でありますように。私たちはこんなにも親切で支えあえる人たちだったのね)

http://twitter.com/#!/Donziii/status/23122591640190976

そして、最後の写真はこちらです。

テロもなく無事に礼拝を終えた人たちの安堵の表情を御覧ください。こういう笑顔が見られて本当によかったですね。ここにも十字架と三日月が一緒に描かれています。

もちろん、私の眼に見えるのは真実の一部に過ぎないでしょう。しかし、このような映像を見ていただければ、この国を分断させようとする勢力だけでなく、連帯しようとする人々の強い意志もご理解いただけるのではないかと思います。最終的にどちらが勝つのかは、一介の日本語教師に過ぎない私にはわかりません。しかし、今回彼らが見せてくれたのは、この国の人々にはこうした危機の際に却って絆を深める力を持っているということでした。

最後に、聖夜のミサを前にして、過激派に名指しされていたエジプトのコプト正教会法王シェノーダ三世が語った言葉をご紹介したいと思います。

“I am glad that many Muslims joined [in the protests] which shows that all are against terrorism and sectarian violence. The attack brought us together.” (テロやセクト主義者の暴力に対する抗議に多くのムスリムが参加してくれて、私は嬉しい。テロがわれわれを連帯させたのだ)

http://weekly.ahram.org.eg/2011/1030/fr2.htm

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